他国の多くの地域と同様に、日本にも「外国法事務弁護士制度」という制度があります。
この制度は、海外で弁護士の資格を有する者が日本弁護士連合会に会員登録し、原資格国法(弁護士資格を取得した国の法律)に関する法律事務を行うことができるものです。
このように日本弁護士連合会に登録している外国法を扱う弁護士は、「外国法事務弁護士」または、略して「外弁」と呼ばれています。
【質問】
日本の企業や個人が海外に関係した法的案件を抱えた場合、外国法事務弁護士(以下、「外弁」という)に法務サービスの提供を依頼することを検討するべきなのはなぜですか。
【答え】
理由はいろいろありますが、たとえば以下のようなものが挙げられるかと思います。 *外弁は、原資格国および日本の両方の国において、多くの資格要件を満たさなければなりません。また、登録後もそれらの要件を満たし続けなければなりません。 *外弁は、原資格国の弁護士会で「優良会員」であり続けることが求められます。したがって、外弁は原資格国および日本の両方の国において、弁護士向けの研修を継続的に受けなければなりません。つまり、両方の国の弁護士会に対して、専門家として責任を持って職務を遂行する義務を負っています。 *外弁に職務上の過誤があれば、その訴えを日本の弁護士会に申請することができます。そして、外弁が日本で受けた懲戒処分は、外弁の原資格国の懲罰委員会などにそのまま採用される可能性があります。 *外弁は、弁護過誤があった場合、依頼者に与えた損害を賠償する能力を有していなければなりません。
つまり、外弁は、弁護士としての能力を保証し、弁護士の不正行為から市民を守るために作られた規制の枠組みの中で、法務サービスを提供しなければならないのです。法的な問題についてサポートが必要になった場合、そのサポートをしてくれる法務サービス提供者(弁護士)を選ばなければなりませんが、上記のような制度の下に活動している外弁に依頼するメリットもあるかと思われます。
【外国法事務弁護士となるための資格要件】 日本で外弁として登録承認を受けるためには、次のような要件を満たしている必要があります。 *日本国外での弁護士資格: 外国で法律事務を行う資格を有し、その弁護士会で「優良会員」と保証されている。 *有資格弁護士としての経験: 外国で、ある一定の年数以上弁護士業務を行った経験がある。 *懲戒処分、犯罪歴などがない: これまでに重大な懲戒処分や刑事上の有罪判決を受けたことがない。 *日本での居住: 弁護士としての専門的業務を適切に行うため、日本に居住することができる(外弁は、一年のうち180日以上日本に滞在しなければならない)。 *日本で財産的基礎を有している: 弁護士としての専門的業務を適切に行うため、財政上の義務を履行することができる。 *日本で賠償責任保険に加入している: 外弁の弁護過誤によって依頼者に損害が生じた場合、きちんとその損害を賠償できるように、損害賠償保険に加入している。またはそれに準じた手段を有している。 *3つの審査機関からの承認が必要: 法務省・日本弁護士連合会・事務所を置く地域の弁護士会(例:大阪弁護士会など)から審査を受け承認を得ている。
【外国法事務弁護士として行える職務】 外弁は、以下のようなさまざまな業務を行うことができます。 *原資格国法に関連する法律事務を遂行する。 *日本の弁護士と共に法律事務所の経営者となる。 *国際仲裁手続きの代理人を務める。 *日本の弁護士および外弁を雇用する。 *日本で自分の法律事務所を開設する。 *保証人を必要としない、外弁を対象とした就労ビザを取得する(このビザでは、他者が就労ビザを取得する際に外弁が保証人になることも可能)。
【日本にいる外国法事務弁護士の数と内訳】 日本弁護士会がオンラインで提供する弁護士検索ディレクトリによると、この記事を書いている時点で、日本国内に約390名の外国法事務弁護士がいます。もっとも登録が多い国は、アメリカ合衆国、イギリス、中国、オーストラリアです。そして、日本の外国法事務弁護士約390名のうち、約360名(約90%)が東京の弁護士会に所属しています。東京を離れると、その数は一気に減ります。東京に次いで外弁の数が多いのは大阪で、10名の弁護士が大阪弁護士会に外弁として登録しています。
外弁は、自身が弁護士資格を取得し法務経験を積んだ国を指定しなければなりません。日本国内の約390名の外弁のうち、アメリカ合衆国だけを見ると、最も多いのがニューヨーク州(約110名)で、次いで多いのがカリフォルニア州(約50名)です。
大阪弁護士会会員の外弁10名の原資格国の内訳は次のとおりです(中国4名、米国ニューヨーク州3名、米国イリノイ州1名、パラグアイ1名、米国カリフォルニア州1名)。
【私が外弁としてできること】 大阪で働く外国法事務弁護士として、そしてカリフォルニア州弁護士会会員および大阪弁護士会会員として、私は以下のようなサービスを提供させていただきます。 *海外と取引をする個人のお客様または事業主の皆様、在日外国人の方々、あるいは、日本に興味関心を寄せる海外のお客様のお手伝いをさせていただきます。 *アメリカ合衆国連邦法およびカリフォルニア州法に関する案件に対して、法務アドバイスを提供いたします。 *主な取り扱い分野は、アメリカ移民法、国際商取引などです。 *アメリカに移住を希望している国際結婚カップルのお手伝いをいたします。 *カリフォルニア州での事業の立ち上げ、その事業の管理運営、休止・廃止手続きなどについてもアドバイスいたします。 *法務文書(ライセンス契約書など)の作成・チェックをいたします。また、その内容に関して相手方と交渉します。 *サウスサンフランシスコにあるバイオテクノロジー企業の企業内弁護士として勤務した経験を、法務サービスに役立てます。 *判例・法律の調査をいたします。 *アメリカでの法務経験と英語ネイティブとしての英語のスキルを生かして、日本人弁護士のお手伝いをします。
【参考リンク・文献など】 この記事は、以下の情報ソースを基に執筆いたしました。 *外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法施行規則 (http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S62/S62F03201000007.html) *法務省のウェブサイト(http://www.moj.go.jp/ONLINE/FOREIGNER/3-1.html) *日本弁護士連合会のウェブサイト(http://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/membership/foreign/registered-foreign-lawyer.html) *大阪弁護士会のウェブサイト (http://www.osakaben.or.jp/index.php#info_area) *T. ブランチ&D. ポッツ著 Practicing Law in a Foreign Jurisdiction: The Roles and Restrictions of Foreign Attorneys in Japan, Michigan International Lawyer, Volume XXIV, No. I, Winter 2012 *私自身の経験から学んだこと
ゲーリー・ハーズは、米国カリフォルニア州の弁護士であり、また、外国法事務弁護士として、大阪に「GOH外国法事務弁護士事務所」を構えています。この記事は情報提供のみを目的としており、法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な案件については、資格を有する法律の専門家に相談してください。ここに書かれた意見はあくまで筆者個人のものであり、いかなる行政機関の見解や意見を反映するものではありません。
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